反面教師
 うちには、給料を払っていないスタッフが結構な人数居た時期があった。
 給料も払わないけど、うちの仕事もしていない。
 ようするに居候な人々。
 4LDKのだだっぴろいマンションだったので、無駄にスペースを空けとくの
もなんだし、イベント好きとしては、思い立ったときに、飲んだり騒いだりで
きる人材が傍に居てくれるとラッキーくらいのノリだった。
 一方で、創業時に決めた我が社の掟というものがあった。
一、社内禁煙
一、整理整頓
一、社内恋愛禁止(社長を除く)
 給料を払ってるスタッフに強制することは出来たが、居候な人々にはなか
なか徹底できず、いつのまにかなし崩しになっていった。
 だんだん、うちの仕事してないスタッフと遊んでる時間が長くなり、取材だ
の打ち合わせだの用のスペースは宴会場と化し、地方から遊びにくる連中
の宿泊所となり、うちは会社の体をなさなくなっていった。
 楽しいからいいやって思ってたけど、給料をもらってる連中はそうも言って
られなかったのだろう、ひとりふたりと欠けていった。
 最終的にはプロジェクトの維持ができなくなるような人数になったので、固
定給を払うスタッフは希望があれば他の会社を紹介して、完全にバラした。
 うちの資金繰りがやばくなり、4LDKを解約して、5坪のワンルームに。
 居候な人々には出ていってもらうしかなかった。
 現在、監督に、編集長に、漫画家に、ライターにと、それぞれ活躍していて
めったに会う機会もないが、噂が聞こえてくるほどにがんばっているようだ。
 でも、給料払ってた人々のことは、全然聞こえてこない。
 また、あんなスペースを確保してとは思わないが、でもあの頃は実に楽し
かった。いつかみんなで仕事しようと口にはしつつ、あんまり本気で考えて
なかった気がする。
 今、掟は、社内禁煙だけ残っている。
 タバコ吸う奴は雇わないし、居候を置く余裕がないだけなんだけど。