ジャズ
22歳で就職して、会社の寮に入った。
時代はバブル。四畳半一間だったが、まかないつき月五千円は破格。
駅から少し離れたその寮は、近所に飲み屋が二軒しかなかった。焼き鳥屋とスナック。どちらにもよく通った。
寮に同じ歳の先輩がいた。高卒で入社したので4年先輩だった。
その人とスナックによく行った。ママがひとりで切り盛りしていて、店内にはいつもジャズが流れていた。当時、まったくジャズには興味がなかったので特に意識してなかったが、先輩のほうはジャズマニアだった。もちろん、ママがジャズ好きだからBGMにしているわけで、二人で盛り上がりまくる。ちんぷんかんぷん。
焼き鳥屋は、隣の銭湯が閉まって、客がいなくなると炭を落とす。どんなに遅くても12時前には閉店した。呑み助としては、いつまでも飲んでいられるスナックが居やすい。事業部が一緒なので、同じ歳の先輩と生活サイクルが一緒。スナックに行くときは一緒のことが多い。一緒に行くとちんぷんかんぷんモード。
ジャスにはなんの責任もないけれど、ジャズが嫌いになった。
蕎麦が好きだ。
なんだか、脱サラ蕎麦屋があちこちに開店してるそうで、なるほどよく見かける。
もちろん、見かければ入る。
総じて、高い。もり一枚700円から1000円ってな感じ。そして麺の量が少ない。コシが強いのはいいが、硬すぎるだけってのも多い。ダシは悪くない。
大概、500円なら通わんでもないけど、こんな値段じゃあもう次は来なくていいというとこばかり。そして極めつけは、店内にジャズが流れている。
なんじゃそりゃってなくらい、BGMがジャズ。それにみあった、こじゃれた内装なのだが、蕎麦屋でジャズ流さんでもと思う。
入店してジャズが流れてると、ああやっぱりと思ってしまう。
残念ながら、いまだに、また行こうと思わせる店には出会えていない。