同好の士世に五百人

 赤井孝美という人が誰かに語っているのを横で聞いていた。

 どんなに特殊な趣味だと自覚していても、日本人1億数千万人、かならず五百人くらいは賛同してくれる人間がいるはず。その証拠に、レズだってホモだってSMだって雑誌が定期的に出てる。(もちろん雑誌が成り立つには読者五百人では無理なので、この手のものは桁違いな人数を確保しているはずだが)

 万人受けを狙っても失敗するのがオチだから、自分の趣味を前に出した作品をやってくべきだ。

 というような主旨の話だったと思う。実は違うニュアンスだったのかもしれない。でもそういう風に解釈して受け止めた。

 なるほどねぇ。と感じ入り、以後、便利に使わせてもらってる。

もちろん楽屋落ちを勧めているわけではない。マスターベーションを世に送り出しても受け入れられるという話でもない。

自分が愛せないのに他人が愛してくれるわきゃないだろうということだ。

そしてそれを五百人が受け入れてくれれば、成功だと思える。

また五百人に受け入れてもらえばいいと思って作れば、大失敗にはならないのだ。

おかげさまで、独立して10年。いまのところ大失敗はない。仕事は続けられている。残念ながら大成功もないのが痛いところだが。

たしか、この五百人論には、更に上に積み上げるヒットの法則があって、五百人に受けたものは…と続くのだが、そっちはなるほどなぁと思えなかったせいか、忘れてしまった。

覚えていて実践できていれば、今頃ヒットメーカーの仲間入りをしていたのかもしれない。

まぁ、そのとき身にできなかったのだから、今更、あの話の続きはどんなんでしたっけ?と聞きにいっても、参考にできるわけもないのだが。